【今さら聞けない】タロットの歴史~黄金の夜明け団の活動~

タロットを扱う以上、その歴史は知っておいた方がよいかもしれません。
特に占いをさらに楽しみたい、奥深いものにしたいとお考えの場合、知っておいてソンはありません。

前回までのお話はこちらです。

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タロットをやる人なら誰でも知っている!? 「黄金の夜明け団」

レヴィ氏の本が翻訳されたことで、イギリスでもオカルトとしてのタロットが認知されるようになった後に、あの有名な秘密結社「黄金の夜明け団」が誕生します。
カバラ、生命の樹、錬金術などを研究していた組織ですね。
その後占星術のシンボルだけではなく、色やら金属やらさまざまな知識をタロットと対応させていったのだそうです。

ユニークなのは階級制度があり、儀式や教育を受けランクアップしていく必要があったというところ。
秘伝を伝授する儀式を受けるために、階級をあげていかなくてはならず、タロットの知識は入ってすぐ得られるものではなかったのです。
当然「秘密結社」ですので、入らなければ入手できないため価値も高まります。
前回登場したエティヤ氏、レヴィ氏のタロットや理論を受け継いでタロットを発展させていったと言われています。

幹部になるためにはタロットの作成が必要だった!?

スタートメンバーが3人だった「黄金の夜明け団」ですが、カバラや錬金術、神話などを好む人が集まってきて、後に自作のタロットカードをも作り始めました
どうやら幹部になるために、タロットカード作成の課題があったというのです。
それゆえ、メンバーはかなりタロットに精通していたのでしょう。

しかし時代は20世紀になり、第一次世界大戦から戦争が続いていくことになります。
そのためカードを作るという部分においては少しずつ廃(すた)れていきました。
そんな時でもメンバーのひとり、アーサー・エドワード・ウェイト氏は製作をしつづけたといいます。

あの「ソラ・ブスカ・タロット」が参考資料!

以前お話した15世紀後半頃のイタリア発「ソラ・ブスカ・タロット」は小アルカナもすべて絵札になっている78枚のデッキでしたが、ウェイト氏がタロットを作る時にこのタロットを参考にしたという話があるとのこと。
北イタリアのブスカ家が、この「ソラ・ブスカ・タロット」のすべての白黒写真を提供したらしいのですが、その展示された写真をウェイト氏が見た、と言われているのですね。

しかし残念なことに、ウェイト氏は文章は書けますが絵が描けない、というので、同じ黄金の夜明け団にいたパメラ・コールマン・スミス氏に、大英博物館に行って「ソラ・ブスカ・タロット」を見てきてくれ、と頼みました
スミス氏はイラストレーターとしても活動していた人。
友人の紹介で黄金の夜明け団に入った後、ウェイト氏と行動をともにしていたのです。

ちなみにウェイト氏はもともと出版関連の仕事をしていたこともあって、カードを作るだけではなく、その後販売していく部分にも通じていたそうです。
そして説明書を読まなくてもカードの意味がイメージしやすいように、わかりやすい絵柄や正位置・逆位置の採用をしたのだと言われています。

新しくタロットを作るためにいろいろと見直し!

さて新しくタロットを作るにあたって、ウェイト氏はカバラの思想や占星術の要素を入れながら、カードを見直していくことにしました。
その過程で、これまではマルセイユ版で一般的に扱われていた「力」と「正義」のカードの順番が入れ替わることになりました。
さらにより神秘主義的な要素を取り入れ、カードの名前も一部変更を加えたりしています。

加えて先ほども話に出た「ソラ・ブスカ・タロット」を参考にした小アルカナの絵札化。
これまでのマルセイユ版では「本当に数を示した札」というニュアンスだったものがガラリと変わったわけで、後のタロットに多大な影響を与えたとされているのは当然のことかもしれません。
おかげで今でも世界のロングセラーとなっていることは周知のとおりです。

1970年代に新たなタロットが!

1970年代に入ると有名なオカルティストのアルフレッド・ダグラス氏が非常に色鮮やかなカードを発表します。
ダグラス氏の著書「ザ・タロット」のために描かれたタロットで、78枚オール絵札の仕様だそう。
これをきっかけにして、きれいな色のカードが増えたといわれています。

神秘主義を盛り込むのが流行していたタロットですが、この後ウェイト氏と同じ黄金の夜明け団出身のアレイスター・クロウリー氏による「トート・タロット」が発表されると、ウェイト氏のものとは雰囲気が違うものの、人気のひと品となりました。
カードの名称も独特なものがあり、やや異色なものと見られていますが、その神秘的で複雑な絵柄には愛好家が多いのだそう。

また正位置・逆位置の概念がない(カードを引くことそのものが目的であり、正逆で読み分けする必要がないということらしい)ところ、力(トートでは欲望という名前)と正義(トートでは調整という名前)の順番が元に戻っているところも特徴ですね。

タロットもバラエティ豊かに!

その後神秘主義にとらわれず、自由な発想で浮世絵をベースにしたり、物語からインスパイアされたりしたさまざまなタロットが発売されるようになります。
サイズも大きいもの、小さいものとバラエティ豊かになりました。

あの老舗メーカー「Lo Scarabeo」でも年間数点の新作タロットを発表しているそうですが、それ以外にもかなりの数のタロットが出ています。
流行り廃(すた)りや、さまざまな事情で絶版になってしまうものなどはありますが、そう考えるとマルセイユ版やウェイト版タロットは別格なのだとも思えてきます。
長い歴史をへて「生き残った」タロットに敬意を表し、鑑定に使っていきましょう。