長年の疑問!? タロットの「力」と「正義」はなぜ逆なの

タロットを扱っていると、大アルカナの「力」と「正義」の位置が違っているものがあることに気づきます。
いったいどっちが正式なのか?
長年くすぶっていた、という方もいらっしゃるようです。
今回はこのことをテーマにしてみましょう。

タロット界のツートップ「マルセイユ版」と「ウェイト版」

タロットの「二大源流」のように言われているのが「マルセイユ版」と「ウェイト版」です。
歴史はマルセイユ版の方が古く、17世紀にさかのぼります。
日本では江戸時代頃でしょうか。

当時フランスのマルセイユはタロットの一大産地として知られており、そこからマルセイユ版と呼ばれるようになりました。
タロットの古典のような扱いをされていますね。
絵柄もシンプルでクラシカルなイメージ。
色も数色だけの使用になっています。

ウェイト版はそれよりはるかに後、20世紀初頭になってからの発行になります。
非常にカラフルで、さまざまなモチーフがちりばめられているのが大きな特徴といえるでしょう。
タロット解説本の類も、このウェイト版をベースにしているものが数多く見られます。
それだけメジャーな存在になっている、ということですね。

それぞれのカードを見ていると…

さて、改めてそれぞれのカードを見ていると、大アルカナにおいて「力」と「正義」のカードが逆になっていることがわかります。
もともと「力」のカードが「正義」のカードよりも後に来る形がスタンダードだったのですが、ウェイト氏がタロットを作る時にこの順番を変更したと言われています。

19世紀に人気の思想家エリファス・レヴィ氏が、タロットの大アルカナとヘブライ文字22文字を対応させたことは知られていますが、こういったカバラとの関連から、カバラの教義を反映させたタロットが登場し始め、中でもウェイト氏が所属していた黄金の夜明け団により、このカバラの解釈が確立されたとされています。
その後ヘブライ文字を介して占星術上の要素ともタロットを対応させていくようになったのです。

ところが文字を順番に当てはめていくと、天秤が描かれた正義のカードには獅子宮に対応する文字「テット」、ライオンが描かれた力のカードには天秤宮に対応する文字「ラメド」が当たってしまうことがわかったので、ヘブライ文字にきちんと対応させて、さらにカバラの教えと調和させるタロットにするため、順番を入れ替えたという逸話があるのだそうです。

かのレイチェル・ポラック氏も…

ちなみにレイチェル・ポラック氏の「タロットの書~叡智の78の段階~」の「力」のページでは、この話について次のように紹介されています。

この変更について次のように述べるのみで、明確な理由を示してくれていません。
わたし自身が納得している理由のために、これまでいつも8番が割り当てられていた『正義』のカードとこのカードを置き換えた。この変更は読者にとって重要なものとはならないゆえに、説明する必要はまったくないだろう。」

ポラック氏は他にも理由がありそうだ、というような含みをもたせた言い方をしていますが、なぜウェイト氏がこの件についてこういった濁した言い方をしたのでしょうか。

照れ隠しだったのでしょうか。
それとも秘密結社の中にいる人間として守秘義務をまっとうしたかったのでしょうか。

現代にはこういう逸話があったらしい、という裏話が世に出てしまうのに。